折角デュッセルドルフに一泊したので、このままオランダに帰るのも勿体無いし、ということで今日は更にその先の街に足を伸ばすことにした。まずはボンに行って、ケルンまで戻ってそこから電車に乗ってアムステルダムに帰る、もし時間があればケルンの近くブリュールにある宮殿を訪ねる、というプランを立てた。そこでまずはローカル電車に45分ほど揺られて（というか結構高速だったが）、ボン(Bonn)の街に向かった。
ボンといえば旧西ドイツの首都だが、駅前を見る限りというか普通の一地方都市という感じであった。大学のある学生の街としても知られているらしいが、やはりオラニエ公をはじめ音楽好きな人にしてみれば、楽聖ベートーヴェンの生地としての印象が強い。中央駅近くのミュンスター広場には有名なベートーヴェンの銅像がドイチェポスト(郵政公社)の黄色い建物(左の写真参照)を背に立っていた。丁度今はクリスマスマーケットの時期で、様々な露店が広場を埋め尽くしていた。
まだお昼過ぎぐらいで帰るのには早かったので、ケルンとボンの間のブリュールという街にある世界遺産「アウグストゥスブルク宮殿」に立ち寄る事にする。この宮殿は駅前に建っているとのことなので、鉄道の旅には誠に好都合だ。但し「世界遺産」という割には知名度も低いし、ガイドブックでも殆ど紹介されていない。まあフランスやオーストリアと比べると宮廷文化がそれ程隆盛を見なかったドイツなので、あまり期待しないで行った。
10分ほど歩いて「ベートーヴェンの家」に着く。ごく普通の通りの建物のひとつなので見逃してしまいそうだ。彼は1770年にここで生まれて22歳まで過ごし、それからウィーンへと移ったとのこと。ということはモーツアルト(1791没)とウィーンでの生活は重なることは無かったことになる。
Ludwig van Beethovenという名前の示す通り、彼はオランダ系の血が入っている。「van XXXさん」というのはオランダの典型的な名前だ。例えば有名な水泳選手に「ファン・デン・ホーヘンバント」という人がいる。ということはベートーベンではなく、「ファン・ベートーヴェン」というのが正式な名前なのかもしれない。博物館の資料を読むと、彼の祖父がネーデルラント(今のオランダ・ベルギー一帯)からボンに移って来たとのことだ。
基本的には館内は撮影禁止のようだが、生まれた部屋だけはパチリと収めておいた。
次にトラムとUバーンを乗り継いで「ドイツ歴史博物館」を訪れる。日本のガイドブックではドイツ統一(1871)から現代までを網羅しているとのことだったが、実際には戦後の復興と統一のみだったので、ちょっと残念。
ブリュールの駅前から続くエントランスの先に建っていたのがアウグストウスブルク宮殿。これは18世紀のケルン大司教兼選帝侯のクレメンス・アウグストが狩猟用の別荘として立てたのが起源で、ロココ風の作りになっている。
この宮殿の前に広がる庭園の先にその別邸であるファルケンルスト宮殿がある、というので足を伸ばしてみた。これが実は結構遠くて、途中で引き返そうかとも思ったが結局片道2Km以上も歩いたような気がする。その割にはこじんまりとした中国趣味の入った小さな建物だった。まあ運動不足解消ための散歩としては良かったとしておこう。
ケルンまでローカル電車で戻ったが、オランダに帰るまでにはまだ時間があったので、有名なケルンのクリスマスマーケットを見物する事にする。ドイツのクリスマスマーケットというと｢世界一有名なニュルンベルク｣、｢世界最大のシュトゥットガルト｣、｢世界最古のドレスデン｣等と言われているが、ケルンのそれもその次には確実に入るくらい有名である。
中央駅のすぐ近くにある有名な大聖堂(いつ見ても本当に大きい)前の広場一杯に百軒以上のお店が並んでいて賑わっていた。やはり主役はグリューワインと呼ばれるホットワインだが、クリスマスの装飾、お菓子を初め色々なものが売られている。特に驚いたのがその店の奥で木を削ったり色を塗ったりと製作を行ない、その場で販売していることだった。さすが職人の国ドイツ、簡単な修正はその場でOKという感じだった。オラニエ公もクリスマスツリーを飾るサンタの人形などを早速購入した。
オランダへ帰るのは行きと同様にICEの最新の列車。ケルン始発だったが、週末のせいかほぼ満席に近い状態で定刻に出発した。案の定国境付近でまたまた恐れていたトラブルが発生していたが、今回はそれ程重症ではなく、20-30分の遅れで到着した。